なかなか開かない話


今日は幸せな一日だった。

そう思いながら布団に潜るはずだったのに、あの出来事のおかげで台無しだ。

そういう日はきっと、誰にでもあるものでしょう。

たとえそれが、はたから見たらくだらないと思うような小さな失敗であっても、当人にとっては気持ちが沈む嫌な出来事です。

しかし、失敗したからといって、自分はダメな人間だなどと思う必要はありません。

誰にでも失敗はあります。

その証拠に、今回はとある女性の失敗談をお話ししましょう。

彼女も人間ですから、大きなものから小さなものまで、さまざまな失敗を重ねているのですが、その中で共感を得られそうなものといえば、物を開けるのに失敗することでしょうか。

普段開けるときには特別意識していないからこそ、失敗したときの驚きと失望は大きいものです。

これはある日、彼女が料理をしていたときのこと。

彼女は面倒くさがりなので、自分でだしを取ることはまずありません。

いつも顆粒タイプのだしの素を使っています。

あれって便利ですよね。

でもその日、なぜか瓶のふたが固くしまっていました。

そういうときってありませんか?

新品じゃないのに、前に使ったときの閉め方が悪いのか、時間の経過で固まったのか、なかなか開かないんです。

大体だしの素のふたを開けるのって料理中ですから、手が濡れていて滑るのも原因なんでしょう。

彼女は左手に瓶を持って、右手でふたをつかんで、必死になって開けようとしていました。

すると突然、予想外の勢いでふたが開いたんです。

その勢いでふたが彼女の右手を離れて、ぽーんと飛んでいきました。

しかも、そのとき手を滑らせたようで、左手に持っていた瓶まで反対方向に飛んでいきました。

瓶が飛んでいったとき、顆粒だしが空中に描いた弧がそれはもう見事で。

一瞬の出来事でしたが、スローモーションのようにしっかり見えましたね。

しかも彼女が住んでいるのは1Kのアパートなので、キッチンのすぐ横にはお風呂場があります。

そしてそのお風呂場の前には、足拭き用のバスマットが置いてあります。

触り心地を重視する彼女が使っているのは、毛が長くてもこもこしているタイプ。

そのもこもこのバスマットの上に、弧を描いた顆粒だしがじゃらじゃらーっと落下していきました。

それを見た彼女は、こう思ったそうです。

この状態でお風呂から上がったら、濡れた足の裏からだしが出てくるんだろうなって。

片付けには苦労したそうです。

もこもこの長い毛の間に細かい顆粒が入ってしまっていて。

料理中のことでしたし、お鍋の蒸気でだしがバスマットに染みこむんじゃないかという恐怖から、時間との闘いでもありました。

それからしばらく、彼女は瓶を開けるのが怖くなったそうです。

さらにお風呂上がりには、いつも自分からだしが取れるのを想像するようになってしまって。

もうほとんどホラーですよね。

それから、こんなこともありました。

彼女はときどき、ご友人と家でおやつタイムを楽しむことがあります。

カフェに行ってもいいんですが、あんまり長居するのは申し訳なく感じられ、彼女たちの場合はおやつよりもおしゃべりが中心なので、好きなお菓子を持ち寄って家でのんびり食べるほうが安上がりで気も楽なようです。

おやつタイムは彼女の家とご友人の家と、交互に開催することになっていて、その日はご友人の家にお邪魔する番でした。

肝心のおやつは、毎回2人で一緒にコンビニに行って、甘いものとしょっぱいものを両方買うのがお約束です。

その日ご友人はチョコレート菓子を買うことにしたようで、彼女はしょっぱい系のお菓子を選んでいました。

本来彼女はチョコレートとラーメン系のお菓子を一緒に頬張るのが好きなのですが、その日はご友人に配慮してチョコレートに無難に合うピーナッツを選んだようです。

最近のピーナッツの袋には便利なことにジッパーがついていることが多いのですが、そのとき彼女が選んだものにはついていませんでした。

彼女がそのことに気づいたのは、ご友人の家に着いて、いざ袋を開けようとしたときです。

しかもその袋は、なかなか開きませんでした。

ギザギザのところから縦に切れば良いのですが、彼女はその切り方があまり好きではありません。

ジッパーがないのですから、食べかけで保管することを考えれば、普通に開きたいと思ったのもわかります。

しかし、このとき彼女がとるべきだった正しい行動は、キッチンにいるご友人にはさみのありかを尋ねることでした。

まあ、今さらそんなことを言っても無意味というものですが。

彼女が実際に行ったのは、ピーナッツの袋を両手で力一杯引っ張るという、なんとも安直な行動だったのです。

その結果、袋は爆発したかのごとく引き裂かれ、中から飛び出したピーナッツが宙を舞いました。

その様子は、まるで部屋の中にピーナッツの雨が降ったようだったといいます。

そしてそのとき、ちょうど飲み物をのせたトレーを持ってキッチンから戻ってきたご友人が、床に落ちた大量のピーナッツを踏んでしまいます。

ころころと床を転がるピーナッツは、ローラースケートのタイヤの役割を果たすのに充分でした。

しかし残念ながら、そのご友人にローラースケートの経験はありません。

奇跡が起こることはなく、ご友人はお盆を持ったまま後ろにひっくり返ってしまいました。

その瞬間、部屋の中の時間は完全に止まったといっても過言ではないでしょう。

彼女はあまりの出来事に現実を忘れ、幼い頃両親とともに自転車でサイクリングロードを走っていた日々を思い出していたそうです。

この一件のあと、彼女はしばらくの間ピーナッツを食べるのをためらうようになったとかいうことです。

ピーナッツには何も罪はありませんが。

いかがでしたか。

失敗は誰にでもあるということがおわかりいただけたでしょうか。

失敗の可能性は、人生のあちこちにひそんでいるものです。

しかし彼女は、だしの素事件のあと、瓶のふたを開けるときは瓶を台に置くことを学びましたし、ピーナッツ事件のあとは、開きそうにないものははさみを使うようになりました。

おかげで、今のところ事件が繰り返されることなく、これらの失敗も笑い話になっています。

とはいえ、今後も彼女はさまざまな失敗を経験することでしょう。

今度は醤油の瓶を割るかもしれませんし、アーモンドの雨を降らすかもしれません。

一時は失敗に胸を痛めても、私たちは必ずそれをバネにできるはずです。

失敗しない人なんていません。

将来笑い話になることを信じて、強く生きていきましょうね。

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