おうちとおもちの話


僕には遠距離恋愛中の彼女がいる。

最近あまり会えていないけれど、メールは毎日欠かさない。

ちなみに僕たちはLINEではなく、あえてメールでやりとりしている。

理由は簡単で、LINEだと会話のテンポが速すぎてスマホから手が離せなくなってしまうからだ。

メールだけに集中することはほとんどなく、お互いテレビを見る片手間にメールすることが多い。

そのせいなのか天然なのか、彼女からはときどきとんちんかんな返信が来る。

ついこの間もそうだった。

あれは、僕が外で見かけた野良猫の話をしていたときのこと。

「今日ね、黒猫さん見たんだ。砂利の駐車場入ったら、急にゴロゴロし始めてさ。かゆかったのかな」

「かわいいところを見ましたね!」

「小雨降ってたのに外歩いてたから珍しいなと思ったんだ」

「雨降ってたんだ~。それは確かに珍しいね」

「日課だから仕方なかったのかな?」

「えらいね~。私は雨降ってたらお家にこもっちゃうもん!」

「でも、今日はそんなに寒くなかったから、お出かけしやすかったかも。さっつんは今日もおうち?」

「ううん、お正月のお餅はこの間無事に食べ終わったので、今日のお昼はおにぎりです!」

…なにが起きたのかと思った。

僕は彼女に今日もインドア生活なのかと質問しただけなのに、元気いっぱいにお昼ご飯を報告された。

誰もそんなことは聞いていない。

「おうち」と「おもち」ってそんなに似てる?

いきなり話題変わっちゃってるのに、なんの疑問も持たず「おもち」だと思い込んでいる彼女はすごい。

本人曰く、LINEと違ってメールはそのとき送られてきた文面しか見ないから、その前の文脈を忘れてしまうことがあるらしい。

それを聞いて、納得したのが、過去のこんなやりとり。

「だいだい、今度の祝日は仕事お休み?」

「うん、おやすみー」

「はーい! おやすみなさーい!」

はい、これ。びっくりする、本当に。

だって自分がなんの質問したのか忘れちゃってるんだから。

しかもこれメールしてるの昼間だし。

いや、僕寝ないよ?ってなった。

会話の途中で突然僕が寝ることに疑問を抱かないのかなあ。

っていうか、メール雑じゃない?

本人曰く、ひらがなで「おやすみ」という字面を見ると、反射的に「おやすみなさい」と返してしまうのだとか。

そこに思考回路は存在しないらしい。

やっぱり天然だと思う。

さっきの「おうち」と「おもち」も同じで、ひらがなが原因なのかもしれない。

じゃあもしかして、あえてひらがなで送ってみればまた面白い返信が来たりする?

そんな天然な彼女、いつもどんな感じで僕にメールしてるんだろう。

透明人間になって、彼女の日常をこっそり覗いてみたい気もする。

不思議発言をするときも元気いっぱいだし、彼女なりに楽しく暮らしていそうだ。

それに、日常でもいろんなことを勘違いしていそうで、すごく興味がある。

いや、いきなりお昼ご飯を報告し始めるくらいだから、ここは直接メールで聞いてみようかな。

これからも彼女の天然さに存分に期待してしまう僕なのでした。

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かなづち

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