現実世界とは異なる世界が描かれるファンタジー小説。
そのなかでも魔法使いは、ファンタジーを象徴するキャラクターではないでしょうか。
人間の力ではどうにもできないことを魔法の力で簡単にやってのける彼らに憧れる人も多いでしょう。
ただ、ファンタジーの世界で魔法使いは、主人公を助けるサポート役として登場しがちです。
そこで今回は、魔法使いが主人公として描かれている小説を集めてみました。
私たちにはない力を持つ彼らには、どのように世界が見えているのでしょう。
紹介する作品のなかには、映画化・ゲーム化された有名作品もあります。
しかし、それらで知っている作品も、原作に立ち返ってみるとまた違った世界が見えてくるかもしれません。
なお、作品を選ぶにあたって、児童文学は対象、ライトノベルは対象外としました。
ハリー・ポッターシリーズ
魔法使いが主人公の小説といえば多くの人がこのハリー・ポッターシリーズを思い浮かべるのではないでしょうか。
ホグワーツ魔法学校に入学した魔法使いの少年ハリー・ポッターが、仲間たちとともに闇の魔法使いヴォルデモートと戦う姿を描いた、J・K・ローリングによる全7巻のファンタジー小説シリーズです。
シリーズ第1巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』は1997年にイギリスで出版されました。
すると、翌年の1998年にはアメリカ版が、1999年には日本語版が出版されるなど、世界中で大ヒットします。
その後、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』と、次々に続編が発表され、2007年にイギリスで出版された『ハリー・ポッターと死の秘宝』をもってシリーズは完結しました。
ちなみに、日本語版の発売当初は1種類しかなかった小説も、現在はさまざまなバージョンがあるのをご存じでしょうか。
以下、順番に紹介していきます。
まずは、国内で最初に発売された上製版。
ハリー・ポッターシリーズの新作が発売されるときの熱狂ぶりを覚えている人にとっては、この表紙の単行本のイメージが強いかもしれません。
実は、2019年に単行本の表紙がリニューアルされ、現在ハリー・ポッターシリーズの単行本といえば以下の新装版が一般的になっています。
中身は同じですが、大きさが上製版より少し小さくなりました。
続いて、文庫本です。
ハリー・ポッターシリーズは2012年に文庫化していましたが、2022年に装丁が新しくなり、現在はこちらの文庫新装版が一般的です。
一方、子ども向けなら以下のペガサス文庫がおすすめ。
上記の文庫本より少し大きなサイズで、すべての漢字にルビが振られています。
そして最後に紹介するのが、Amazon Kindleや楽天Koboなどの電子書籍版です。
ハリー・ポッターシリーズは冊数が多く紙で買うのに抵抗があるという人や、気軽に読みたいという人におすすめです。
映画化:ハリー・ポッターシリーズ
また、ハリー・ポッターシリーズは実写映画も大ヒットしています。
ときどきテレビでも放送されるため、小説を読んだことはなくても映画は知っているという人が多いのではないでしょうか。
基本的に小説1巻が映画1作で、小説と映画で同じタイトルがつけられています。
ただし、最終巻の『ハリー・ポッターと死の秘宝』だけ映画ではPart1とPart2の2作に分けられたため、小説は全7巻ですが映画は全8作となっています。
映画は第1作が2001年公開、最終作が2011年公開だったので、当時は小説版の新作が発表されるたび、映画版の新作が発表されるたび、相乗効果となってハリー・ポッターブームが沸き起こっていました。
映画ではシリーズを通して主人公のハリー・ポッター役をダニエル・ラドクリフさん(日本語吹替え:小野賢章さん)、ロン・ウィーズリー役をルパート・グリントさん(日本語吹替え:常磐祐貴さん)、ハーマイオニー・グレンジャー役をエマ・ワトソンさん(日本語吹替え:須藤祐美さん)が演じています。
1巻につき1歳年齢を重ねていく原作と同様に、少年少女から青年へと成長していく3人の姿も見どころのひとつです。
舞台化:ハリー・ポッターと呪いの子
こうして小説・映画ともに完結したかに思われたハリー・ポッターシリーズ。
しかしながら、映画の最終作が公開されてから約5年後の2016年、なんとシリーズ8番目の物語『ハリー・ポッターと呪いの子』が登場したのです。
しかも本作は、小説ではなく、シリーズ初の舞台作品として公開されました。
『ハリー・ポッターと死の秘宝』から19年後を描いた物語で、本作が本当のシリーズ完結編となったのです。
この物語はイギリスで初演を迎えたのち、舞台脚本の形で書籍化もされ、日本語訳も出版されています。
そして本公演は、ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリアのメルボルン、ドイツのハンブルク、カナダのトロントと、世界中で公演され、2022年からはついに東京ロングラン公演が実現しました。
TBS開局70周年記念としての上演で、これに先立ってTBS赤坂ACTシアターがハリー・ポッター専用劇場として改修されました。
また、本公演はもともと前編と後編の2部制の舞台でしたが、2021年にブロードウェイにて前編を第1幕、後編を第2幕とする新バージョンが誕生したため、東京公演ではこの新バージョンが採用されています。
ハリー・ポッター役を藤原竜也さん、石丸幹二さん、向井理さんがトリプルキャストで、ロン・ウィーズリー役をエハラマサヒロさん、竪山隼太さんが、ハーマイオニー・グレンジャー役を中別府葵さん、早霧せいなさんが、それぞれダブルキャストで演じるという初演キャスト陣で東京公演はスタート。
ロングランのため、キャストを変更しながら現在も公演は続けられています。
詳しい公演スケジュールやキャスト、チケットなどは公式サイトを確認してください。
また、東京版の舞台脚本も出版されています。
テーマパーク化:USJ「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」
日本国内でのハリー・ポッター人気はこれだけにとどまりません。
2014年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にハリー・ポッターの世界をテーマにしたエリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が登場。
ホグワーツ城やホグズミード村が忠実に再現されています。
迫力満点のライド型アトラクション「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」や、魔法の杖に選ばれる体験ができるショップ「オリバンダーの店」などが人気スポットです。
エリア内では、ほかにも魔法が体験できるさまざまなエンターテイメントが開催されています。
チケットなど、詳しくは公式サイトをご確認ください。
テーマパーク化:ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター
さらに2023年には、東京都練馬区にあった遊園地としまえんの跡地に、「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター」というエンターテイメント施設までオープンしました。
ここでは、イギリスの映画製作担当者たちが手作業で完成させた、ハリー・ポッターシリーズの映画のセットや小道具を見ることができます。
大広間のセットに入ったり、登場人物たちが着ていた衣装が見られたり、箒に乗ってみたり、バタービールを飲めたりと、まるで映画の世界に入ったかのようなさまざまな体験を楽しめます。
スタジオツアーのチケットは日時指定の予約制なので、詳しくは公式サイトをチェックしてください。
関連映画:ファンタスティック・ビーストシリーズ
なお、ハリー・ポッターシリーズには、派生作品があります。
そのうちのひとつが、映画ファンタスティック・ビーストシリーズです。
シリーズ第1作の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、ハリーが生まれる54年前が舞台。
2作目からは若かりし頃のダンブルドアも登場します。
映画は全5作となる予定です。
関連ゲーム:ホグワーツ・レガシー
ハリー・ポッターシリーズのもうひとつの派生作品が、ゲーム「ホグワーツ・レガシー」です。
1800年代の魔法界を舞台に、ホグワーツ魔法魔術学校の5年生になって冒険するRPGです。
グリフィンドール・スリザリン・ハッフルパフ・レイブンクローのなかから好きな寮を選んでプレイすることができます。
小説から始まったハリー・ポッターシリーズの世界は、映画、舞台、テーマパーク、ゲームと、さまざまなジャンルに広まり、一大エンターテイメントとなりました。
これからもますます進化を続けてくれるかもしれません。
ウィッチャーシリーズ
続いて紹介する作品は、ポーランドで最も有名なファンタジー作家として知られるアンドレイ・サプコフスキの代表作、ウィッチャーシリーズです。
人間のほかに、エルフやドワーフたちも存在する中世のヨーロッパが舞台。
諸国を渡り歩き、魔法と剣を武器に怪物を退治する存在が「魔法剣士(ウィッチャー)」です。
超人的なスピードと運動能力を持つウィッチャーのゲラルト、女魔法使いのイェネファー、シントラ王家の血を引く少女シリたちが、北方諸国と南のニルフガード帝国との戦いに巻き込まれながらも、自らの運命に立ち向かう姿を描いたダークファンタジーです。
日本語版は、短編集2冊(『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』、『ウィッチャー短篇集2 運命の剣』)と長編5冊(『ウィッチャーI エルフの血脈』、『ウィッチャーII 屈辱の刻』、『ウィッチャーIII 炎の洗礼』、『ウィッチャーIV ツバメの塔』、『ウィッチャーV 湖の貴婦人』)が出版されています。
なお、日本では長編5冊が先に出版され、そのあとで短編集2冊が出版されましたが、執筆順・時系列ともに短編集の方が先です。
ゲーム化:ウィッチャーシリーズ
このウィッチャーシリーズを一躍有名にしたのが、ゲームの存在でしょう。
小説シリーズの続編の世界が舞台で、「ウィッチャー」、「ウィッチャー2 王の暗殺者」、「ウィッチャー3 ワイルドハント」の3作が存在します。
全世界で累計5,000万本を売り上げており、なかでも2015年に登場した「ウィッチャー3 ワイルドハント」は、全世界で800以上のメディアアワード&ノミネーションを獲得している人気作です。
ストーリーは途中からになりますが、Nintendo SwitchやPS4・PS5に対応しているため、興味のある人はここから始めてみるのがおすすめです。
オープンワールドRPGで、美しいグラフィックや武器・魔法を駆使したバトルシステムもさることながら、ダークで奥深いストーリーが特に高く評価されています。
なお、過激な表現が含まれるため、18歳未満の方はプレイできませんのでご注意ください。
また、ゲームシリーズ第1作目の「ウィッチャー」については、リメイク版が制作中との情報があります。
発売日がいつになるかはまだわかりませんが、こちらの最新情報にも注目です。
どのゲームも、小説を読んでいなくても楽しめるようになっていますが、キャラクターの過去や人間関係を深く理解したい人はぜひ原作小説を読んでみてください。
ドラマ化:ウィッチャーシリーズ
さらにウィッチャーシリーズは、2019年からNetflixにて実写ドラマ化もされています。
主なキャストは、ゲラルト役にヘンリー・カヴィル、イェネファー役にアーニャ・シャロトラ、シリ役にフレイヤ・アーランです。
ドラマのストーリーは小説がベースとなっており、シーズン1は『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』のなかの短編5作と『ウィッチャー短篇集2 運命の剣』のなかの短編2作を、シーズン2は『ウィッチャーI エルフの血脈』を、シーズン3は『ウィッチャーII 屈辱の刻』を映像化したものとなっています。
なお、ドラマはシーズン7まで計画されているそうで、シーズン4からはゲラルト役をヘンリー・カヴィルではなくリアム・ヘムズワースが演じることになっているそうです。
死のエデュケーションシリーズ
次に紹介する小説は、死のエデュケーションシリーズです。
ナポレオン戦争時代の英国を舞台に人間とドラゴンの絆を描いたテレメア戦記シリーズが有名なアメリカのファンタジー作家、ナオミ・ノヴィクの作品です。
死のエデュケーションシリーズは、虚空の闇に浮かぶ巨大な魔法使い養成学校、スコロマンス魔法学院を舞台にした学園物語。
これだけ見るとハリー・ポッターシリーズのようですが、こちらはそんな青春友情ものではありません。
スコロマンス魔法学院には教師がおらず、代わりに魔物たちがはびこっています。
生徒たちは卒業するまで現実世界に戻ることは許されず、その間ひっきりなしに襲いかかってくる魔物たちと戦い、生き残らなければならないのです。
卒業式まで生き延びる生徒は4分の1にも満たないといわれ、ときには生徒同士で争うこともあります。
本シリーズは、そんな過酷な環境のなか、主人公の少女ガラドリエルが仲間たちと交流し成長していく、学園サバイバル・ファンタジーなのです。
自身の生まれやハードな学園生活によって人付き合いをしないひねくれ者になっている主人公がどのように変わるのか、そして彼女たちがどうやってサバイバルしていくのか、注目です。
そんな死のエデュケーションシリーズは『闇の魔法学校』、『闇の覚醒』、『闇の礎』の3部作となっています。
1冊の厚さはハリー・ポッターシリーズ並みですが、伏線回収も素晴らしくどんどん読めてしまいます。
魔女の宅急便シリーズ
続いて紹介するのは、ハリー・ポッターシリーズと並び日本で知らない人はいないこの名作、魔女の宅急便シリーズ。
角野栄子さんによる児童文学シリーズで、原作よりもスタジオジブリのアニメ映画でおなじみではないでしょうか。
独り立ちした魔女のキキが、相棒の黒猫ジジを連れて新しい町に引っ越し、ほうきで空を飛べる魔法の力を活かして宅急便を始め、さまざまな人と出会いながら成長していく姿を描いた物語です。
しかし、アニメ映画が公開された1989年時点では、小説はまだ第1作目の『魔女の宅急便』しかなく、シリーズ化されていませんでした。
続編となる『魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法』が出版されたのは1993年のことです。
キキは宅急便の仕事を頑張りながら、おかあさんにくしゃみの薬の作り方を教わることになります。
そして、2000年出版の『魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女』では、キキのもとに12歳の女の子・ケケがやってきて、キキの平和な日常が乱される事態に。
続いて2004年出版『魔女の宅急便その4 キキの恋』では17歳になったキキととんぼの恋が描かれ、2007年出版『魔女の宅急便その5 魔法のとまり木』では、とんぼとのすれ違い、飛ぶ魔法の弱まり、ジジと言葉が通じないなど、19歳になったキキに数々の危機が訪れます。
そしてシリーズ最終作、2009年に出版された『魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち』では、前作からなんと15年が経過し、キキは30代半ばに。
彼女はとんぼと結婚し、双子のお母さんになっていました。
しかし、活発な性格の姉・ニニは魔女に興味がなく、物静かな性格の弟・トトはなれないはずの魔女に興味津々。
双子は13歳になり、かつてのキキと同じように旅立ちのときを迎えます。
ニニとトト、それぞれの決断と、母親として子育てに悩むキキの姿が共感を呼ぶ1冊です。
これらの小説は、福音館創作童話シリーズとして単行本が、福音館文庫として文庫本が出ているほか、角川文庫からも出版されています。
お子さんはもちろん、子どもの頃にジブリの『魔女の宅急便』を見た大人の方も、キキがあれからどんな風に成長したのか、ぜひ小説で彼女と再会してみてください。
上記のように、魔女の宅急便シリーズは全6巻で完結しました。
しかしその後、魔女の宅急便のスピンオフ作品が3作登場します。
1作目は2016年出版の『魔女の宅急便特別編 キキに出会った人びと』。
キキが出会ったコリコの町の住人たちの人生が描かれ、物語の裏側を知ることができる作品です。
2作目は2017年出版の『魔女の宅急便特別編その2 キキとジジ』。
幼い頃のキキと黒猫ジジの物語で、キキが魔女になることを決意するまでと、ジジが魔女猫になるまでが描かれます。
そして3作目は2022年出版の『魔女の宅急便特別編その3 ケケと半分魔女』。
本作はこれまでのスピンオフシリーズとは異なり、『魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女』に登場したケケが、大人になって書いた物語という設定になっています。
アニメ映画化:魔女の宅急便
宮崎駿監督の『魔女の宅急便』は1989年に公開された映画で、角野栄子さんの同名小説が原作になっています。
声優には、主人公キキ役に高山みなみさん、ジジ役に佐久間レイさん、新しい町でキキが出会う少年・トンボ役に山口勝平さん、キキの定住先のおかみ・おソノ役に戸田恵子さん、おソノの夫役に山寺宏一さんと、豪華メンバーをキャスティング。
また、主題歌には荒井由実さんの「ルージュの伝言」と「やさしさに包まれたなら」が採用され、映画とともにこれらの楽曲も大ヒットしました。
ちなみに、原作と映画を比較してみると、基本的な流れは同じものの、トンボ(原作では「とんぼ」とひらがな表記)が明るい性格で描かれている点や、ジジが話せなくなってしまう展開など、原作とは異なる設定がいくつか見られます。
実写映画化:魔女の宅急便
また、『魔女の宅急便』は実写映画にもなっています。
2014年に公開された映画で、タイトルは同じく『魔女の宅急便』。
ジブリのアニメ映画の実写化ではなく、原作小説をもとにした実写映画です。
キキ役にはオーディションで小芝風花さんが選ばれました。
ミュージカル化:魔女の宅急便
さらに本作はミュージカル化もされており、繰り返し再演される人気作にもなっています。
2017年には、キキ役に上白石萌音さん、トンボ役に阿部顕嵐さん、2018年には、キキ役に福本莉子さん、トンボ役に大西流星さん、2021年には、キキ役に井上音生さん、トンボ役に那須雄登さんというキャストでそれぞれ上演されました。
そして2024年、4度目のミュージカル『魔女の宅急便』では、キキ役を山戸穂乃葉さん、トンボ役を深田竜生さんが演じています。
施設化:魔法の文学館
そして、2023年11月には、魔女の宅急便シリーズの作者である角野栄子さんが館長を務める魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)がオープンしました。
館内に入ると『魔女の宅急便』の舞台であるコリコの町をイメージしたいちご色の世界が広がります。
1階中央にある「黒猫シアター」はジジが名前の由来。
奥行きのある4面スクリーンで、見ているとまるで絵本の中に入ったかのよう。
2階にあるライブラリーには約10,000冊もの児童書があえて分類せず並べられていて、晴れていれば外の読書テラスへ本を持ち出すこともできます。
また、ギャラリーでは半年ごとに企画展も開催されます。
そのほか、角野栄子作品のキャラクターグッズが購入できるショップや、「カフェ・キキ」という名のレストランもあり、魔女の宅急便シリーズのファンにはうってつけの場所です。
なお、魔法の文学館への入館にはインターネット予約が必要です。
予約状況に余裕がある場合に限り窓口での当日受付も可能なそうなので、チケットの予約や当日の受付状況など、詳しくは公式サイトを確認してください。
テーマパーク化:ジブリパーク「魔女の谷」
ジブリパークは、2022年11月、「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」内にオープンした公園です。
スタジオジブリ作品の世界が表現されていて、公園内を自由に散策して楽しめるようになっています。
オープン時には「ジブリの大倉庫」、「青春の丘」、「どんどこ森」の3つのエリアだけでしたが、2023年11月に「もののけの里」がオープン。
そして、2024年3月、5つ目のエリアとしてオープンしたのが「魔女の谷」です。
ここは、『魔女の宅急便』や『ハウルの動く城』、『アーヤと魔女』などの魔女が登場するスタジオジブリ作品がテーマ。
キキの実家である「オキノ邸」や、コリコの町でキキとジジが暮らすことになる「グーチョキパン屋」がアニメ映画そのままに再現されています。
さらにこのパン屋では、実際にパンが販売されていて園内で食べられるとのこと。
チケットは予約制なので、詳しくは公式サイトをご確認ください。
ジブリパーク周辺のホテル・旅館を探す【楽天トラベル】 (rakuten.co.jp)ほんものの魔法使
『ほんものの魔法使』は、1966年にアメリカの作家であるポール・ギャリコが発表したファンタジー小説です。
国内ではちくま文庫から日本語訳が登場していましたが、長年絶版の状態になっていました。
しかし、2021年に宝塚歌劇団による舞台化が発表されたことをきっかけに、創元推理文庫からの復刊が決定したのです。
物語は、アダムという青年が犬のモプシーを連れて、世界中の魔術師が集まる魔法都市・マジェイアにやってくるところから始まります。
アダムは魔術師名匠組合に加入するため、審査会に参加します。
マジェイアに住む魔術師たちは実はマジシャン、つまり手品師なのですが、アダムが審査会で見せた「魔法」は、誰もタネがわからないものでした。
もしかしてアダムはほんものの魔法使いなのでは…?
彼の存在が、マジェイア全体を揺るがしていきます。
王道のファンタジー小説と違って、魔法の存在が当たり前ではない世界が舞台になっていることが特徴の作品です。
なお、本作の詳しいあらすじやおすすめポイントは、以下のページでまとめています。
ミュージカル化:ほんものの魔法使
宝塚歌劇団雪組によるミュージカル『ほんものの魔法使』は、2021年5~6月に宝塚バウホールとKAAT神奈川芸術劇場で上演されました。
キャストは、主人公のアダム役に朝美絢さん、ヒロインのジェイン役に野々花ひまりさん、アダムが連れている犬のモプシー役に縣千さん。
劇中では実際にさまざまなマジックが披露されています。
魔法のカクテル
続いては、ドイツの児童文学作家であるミヒャエル・エンデの『魔法のカクテル』を紹介します。
ミヒャエル・エンデの名前を知らない人も、『モモ』や『はてしない物語』の作者だと言えばピンとくるのではないでしょうか。
彼は1989年に『はてしない物語』の訳者・佐藤真理子さんと結婚しており、1991年には彼に関する資料を世界で唯一常設展示する黒姫童話館が長野県に開館するなど、日本との関わりが深い作家としても知られています。
そんなミヒャエル・エンデが1989年に発表した『魔法のカクテル』は、大晦日の夜が舞台の、風刺が効いたファンタジー作品です。
真夜中までに自然を破壊しなければならない魔術師イルヴァツァーのもとに魔女が現れ、どんな願いも叶えることのできる魔法のカクテルを作ることになります。
一方、猫のマウリツィオとカラスのヤーコプは2人の悪巧みを知り、なんとか阻止しようと奮闘します。
タイムリミットが迫るなか、はたして地球の自然は守られるのでしょうか。
登場する魔法使いは悪側の存在として描かれながら、そのキャラクターはどこかコミカル。
ファンタジー作品ですが、読むと環境破壊問題について考えたくなる作品です。
舞台化:願いがかなう ぐつぐつカクテル
ちなみに本作は戯曲化もされており、ドイツでは複数回上演される人気作品になっています。
日本でも2020年に新国立劇場にて『願いがかなう ぐつぐつカクテル』のタイトルで初演公演が行われました。
王様に恋した魔女
最後に紹介する小説は、柏葉幸子さんが2016年に発表した『王様に恋した魔女』。
柏葉幸子さんといえば、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に影響を与えたとされる『霧のむこうのふしぎな町』や『地下室からのふしぎな旅』、『天井うらのふしぎな友だち』の3部作が有名な、日本を代表する児童文学作家のひとりです。
『王様に恋した魔女』も子どもから大人まで楽しめる王道のファンタジー作品で、戦乱の世に国を守る魔女を主人公とした短編集です。
魔女狩りが行われる世界で、それぞれの魔女の生き方が描かれます。
単行本の挿絵は『魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女』、『魔女の宅急便その4 キキの恋』、『魔女の宅急便その5 魔法のとまり木』の表紙も描いた佐竹美保さんが担当しています。
魔法使いの人生を覗いてみて
人間には使えない魔法の力で不可能を可能にしてしまう魔法使いたち。
彼らの存在は子どもたちに夢や希望を与えてくれます。
しかし、子ども向けと思われがちなファンタジー小説のなかには、ダークなストーリーや風刺が効いた作品もあり、大人でも充分楽しむことができます。
特別な魔法が使える彼らも、作中でぶつかる壁やそれを乗り越えて成長していく姿は私たち人間と同じです。
たまには現実世界とは異なるファンタジーな世界に浸りつつ、彼らの成長や生き様に勇気をもらってみてはいかがでしょうか。
国立大学にて日本文学を専攻。
一般企業に就職したのち、フリーランスのWebライターに転身。
クラウドソーシングサイトを通じて、大手出版社が運営する本のポータルサイトに書籍レビュー記事を投稿した経験を活かし、2019年に書籍・情報サイト「いかけや日記」を開設。
2020年頃、宝塚歌劇団のファンに。
舞台の原作本を読む機会が増えたことから、2024年、「いかけや日記」を宝塚原作本の紹介を中心としたサイトへとリニューアル。
なお、読書スピードは超スロー。