「これだけは、譲れない」――そんな、自分だけの信念。
あなたにも、きっと一つはあるはずです。
けれど、その信念を貫いて生きるのは、あまりにも難しい。
強い力の前では、つい口をつぐんでしまったり。
生活のために、自分の信念を少しだけ曲げてしまったり。
その場の空気に流されて、心にもないことに頷いてしまったり…。
そんな、理想通りに生きられない自分に、無力感を覚える夜。
けれど物語の中には、そんな私たちのちっぽけな無力感を、まばゆいほどの光で吹き飛ばすような生き様を貫いた男がいました。
社会が求める「要領の良さ」に背を向け、たとえ貧しくなろうと、敵が増えようと、ただひたすらに自分の信念だけを道しるべに生きた男が。
今日は、そんな彼の物語『シラノ・ド・ベルジュラック』を処方します。
この記事は、あなたの弱さを責めるものではありません。
しかし、読み終える頃には、自分の信念を貫くことの「本当の意味」と、その「まばゆいほどの美しさ」を、きっと再確認できるはずです。
まずは基本情報から｜『シラノ・ド・ベルジュラック』はこんな物語
ご紹介する『シラノ・ド・ベルジュラック』は、17世紀のフランスに実在した剣士であり詩人でもある人物を主人公とした、エドモン・ロスタン作の戯曲です。
1897年に初演されて以来、時代を超えて愛され続ける、歴史ロマンスの名作と言えるでしょう。
▼ 私が何度も読み返した、魂の一冊 ▼
【ネタバレなし】3分でわかる『シラノ・ド・ベルジュラック』のあらすじ
物語の舞台は17世紀フランス。
主人公シラノ・ド・ベルジュラックは、向かうところ敵なしの凄腕の剣客であり、胸を打つ美しい詩を紡ぐ才能豊かな詩人でもあります。
しかし、彼には一つの大きな悩みがありました。
それは、人並外れて大きな鼻。
その醜い容姿へのコンプレックスから、想いを寄せる従妹のロクサアヌに、どうしても恋心を打ち明けられずにいたのです。
そんなある日、シラノはロクサアヌの恋心を知ってしまいます。
彼女が愛するのは、同じ隊に所属する、息をのむほどの美青年クリスチャン。
そして彼もまた彼女を愛している…。
しかし、美貌に恵まれたクリスチャンには、一つの欠点がありました。
それは、絶望的に口下手で、愛の言葉を紡ぐことができないこと。
愛する人の恋を、この手で叶えるために。
シラノは、自らの詩の才能をクリスチャンに捧げ、「言葉」で恋の橋渡しをすることを決意します。
シラノの魂から紡がれる「言葉」と、クリスチャンの「美貌」。
二人が一つになった時、ロクサアヌの心は激しく揺さぶられますが…。
この奇妙な三角関係の先に待っている、あまりにも切ない運命とは――。
私が『シラノ・ド・ベルジュラック』に心を奪われた3つの理由
なぜ、この100年以上も前の物語が、現代に生きる私の心をこれほどまでに奪ったのか。
それは、主人公シラノの不器用な「生き様」そのものに、私が心底惚れ込んでしまうほどの、圧倒的な「美学」があったからです。
理由1：何者にも媚びない「孤高の魂」に、私の理想を見た
私は、シラノの生き様に、自分の「理想の姿」を見ました。
権力者に媚びを売れば豊かな生活が約束される時代に、彼は「名声のために他人の機嫌を取るのはごめんだ」と、それを断固として拒否します。
喧嘩っ早い性格で、たとえ相手が何人いようと、たった一人で敵に立ち向かう、その圧倒的な豪傑さ。
人に頼らず、自分の力だけで生きていく、その孤高の魂。
強きに屈してしまいがちな私にとって、彼の姿は、「こう在りたい」と願う理想の生き様そのものでした。
理由2：あまりにも「ひたむきな愛」の形に、切なさで胸が張り裂けそうになった
この物語の愛は、ただロマンチックなだけではありません。
あまりにも一途で、頑なで、そして胸が締め付けられるほど切ない。
シラノは、たとえ自らの名は伏せられたとしても、自分の詩で愛する人が喜ぶことを何よりの幸せだと考えています。
自分の幸せよりも、愛するロクサアヌと、彼女が愛した美青年クリスチャンの恋を優先させるのです。
その見返りを求めないひたむきな愛の形に、私は深く心を揺さぶられました。
この複雑で、しかし純粋な愛の結末を、ぜひあなた自身の目で確かめてほしいと思います。
理由3：シラノが紡ぐ「言葉の美しさ」に、ただ魅了された
シラノの魅力は、その剣の腕前や豪傑さ、そしてひたむきな愛だけではありません。
詩人の彼が魂から紡ぎ出す「言葉の美しさ」もまた、私の心を深く惹きつけました。
彼は、愛するロクサアヌのために、ロマンチックな言葉を惜しみなく捧げます。
その詩的な響きは、物語の中のロクサアヌだけでなく、ページをめくる私の心にまで、まっすぐに届きました。
「ああ、こんな風に愛を語られてみたい」
彼の言葉を読んで、私は率直にそう思いました。
彼が紡ぐ詩は、どんな高価な贈り物や美しい容姿にも勝る、愛そのものなのです。
普段は豪傑でありながら、あれほど繊細で美しい言葉を生み出すことができるシラノは、私にとって衝撃の人物でした。
私は、彼の剣士としての勇ましさと、詩人としてのロマンチックさに、完全に魅了されてしまったのです。
【体験する処方箋】物語を120%楽しむ4つの方法
この素晴らしい物語を、あなたもぜひ体験してみてください。
特におすすめの楽しみ方を4つご紹介します。
① 書籍で「読む」：私が手に取った、魂の一冊
まずは、文字の力で物語を深く味わってみてください。
私が何度も読み返し、その言葉に惹かれたのは、シラノの豪快さと繊細さが胸に迫る、こちらの岩波文庫版です。
② 【読み放題】Kindle Unlimitedで心ゆくまで浸る
「まずはお得に試してみたい」というあなたには、Kindle Unlimitedが最高の選択肢です。
実は、より現代的な訳で読みやすいと評判の光文社古典新訳文庫版が、月額料金だけで読み放題の対象になっています。
まだ会員でない方は、30日間の無料体験が可能です。
この機会に、シラノの世界に心ゆくまで浸ってみてはいかがでしょうか。
③ 宝塚版で「観る」：私が恋した、運命の舞台
私がこの物語にのめり込むきっかけとなった、轟悠さん主演の宝塚版『シラノ・ド・ベルジュラック』。
これこそが、私があなたに最も体験してほしい「処方箋」です。
シラノの苦悩と気高さを体現した、轟さんの圧巻の演技に、きっとあなたも心を奪われるはずです。
こちらはAmazonプライム・ビデオで、レンタルにてすぐに視聴できます。
④ 映画版で「観る」：世界が絶賛した、もう一つの『シラノ』
世界中で高い評価を得た、最新の映画版『シラノ』も、また違った魅力に溢れています。
舞台版を観た後にこちらを観ると、表現の違いから物語をさらに深く味わうことができますよ。
まとめ：あなたのための「処方箋」を受け取ってください
今回は、私が心底惚れ込んだ、一人の男の「不器用な生き様」を描いた物語、『シラノ・ド・ベルジュラック』をご紹介しました。
権力に媚びず、ひたむきに愛を貫き、そして魂で美しい言葉を紡ぐ。
シラノの生き方は、現代社会が求める「要領の良さ」とは、かけ離れているかもしれません。
しかし、その不器用なまでにまっすぐな姿は、私たちが心のどこかで「こう在りたい」と憧れる、まぶしいほどの美しさを放っています。
この物語が、あなたの「信念」をそっと支える、お守りのような処方箋になることを、心から願っています。
