人生をかけた手紙。
多くの人にとって、ファンレターがまさにそれにあたるのではないでしょうか。
実は2ヶ月半ほど前、私は人生で初めて本気のファンレター(むしろラブレター)を書きました。
大好きなあの方に気持ちを伝えたい。
本当に命がけの勢いでした。
そこでこの記事では、初心を忘れないという意味も込めて、私の体験談をもとにファンレターの作成手順やマナー、悩んだポイントや実際の対応などを紹介します。
ファンレターを書いてみたいという人はぜひ参考にしてみてください。
ファンレターを書こうと思った経緯
そもそも私がファンレターを書こうと思ったきっかけは、コロナの影響で観に行こうと思っていた舞台が中止になり、無観客配信になったことでした。
無事に舞台を観られたことは嬉しかったのですが、無観客では拍手が届きません。
そこで、拍手の代わりにファンレターを書こうと思い立ちました。
感想自体はSNSやブログに掲載しても良いのですが、それではご本人の目に留まるかどうかわかりません。
しかしファンレターなら、確実に気持ちを伝えられます。
そうはいっても、今はTwitterのDMなどで芸能人にも簡単にメッセージを送れる時代。
ファンレターなんて時代遅れじゃないか、と思う人が多いと思います。
そんななかなぜ私があえてファンレターを選んだかというと、SNSの場合、心配な点がいくつかあったからです。
まず、長いメッセージが続くと、スマホでは読みにくいうえにスクロールが大変です。
また、ネットの文字だと個性が出ず、印象に残りづらいところもデメリットでしょう。
さらに、日常的にファンからのDMを受け付けている人の場合、舞台の感想以外のさまざまなメッセージ(おはようの挨拶や個人的な近況報告など)に紛れて読まれない可能性もあります。
なにより、正体不明なSNSアカウントからメッセージを送ってもあまり信用されないのではないかということが心配でした。
その点ファンレターなら、作成・送付の手間がかかるのでこちらの本気度が伝わりやすく、名前と住所を記載するので相手にも安心して読んでもらえるのではないでしょうか。
ファンレターの送り先を検索
さて、ファンレターを書くと決意したら、いよいよ本格的な準備に取りかかります。
私はまず、ネットでファンレターの送り先を検索しました。
先ほども述べたように、SNSでファンと交流することが当たり前の今、相手によってはそもそもファンレターを受け付けていない場合があります。
また、普段SNSでしかメッセージを受け付けていなくても、ライブや舞台のときに限り会場でファンレターを受け付けてくれる場合もあります。
そのほか、ご本人への手渡しが可能なケースなど、ファンレターへの対応は状況や事務所によってさまざまなので注意が必要です。
宛先と注意点は公式サイトに掲載されていることが多いため、最初に確認しておきましょう。
特に、ファンクラブの会員のみご本人に手渡し可能など、ファンクラブに入っている人と入っていない人でファンレターの送り方が異なる場合は要注意です。
マナー違反にならないよう、しっかり下調べしておかなければなりません。
また、私が書いたときはコロナの影響でファンレターの送付先が限られていました。
今後もいつ対応が変わるかわからないため、その都度公式サイトをチェックしておくと安心です。
レターセットの用意
ファンレターの宛先を確認したところで、次に準備したのがレターセット。
しかし、種類が豊富なので、優柔不断な私は選ぶのが大変でした。
以下の順番で考えていくことで、なんとかお気に入りのレターセットを用意することができました。
市販品か自作か
レターセットは、市販のものを購入するパターンと、サイト上で配布されているデザインをダウンロードし印刷して使うパターン、写真やイラストなどを用意して自作するパターンなどがあるようです。
私は紙の質にもこだわりたかったので、その点もおそらく計算されているであろう、市販品を購入することに決めました。
購入場所
市販のものを使うということはすんなり決まったのですが、次に悩んだのはどこでレターセットを購入するかということでした。
シンプルなものなら書店や文具店などでも見つかりますが、デザインにこだわりたい場合はやはりロフトや東急ハンズなどのバラエティショップが種類豊富です。
しかし、私はどちらの店舗も自宅から遠かったため、最終的にAmazonで購入しました。
送料がかかることもありますが、好みのデザインをとことん探せることがオンラインショップのメリットです。
Amazonでレターセットを探す(Amazon.co.jp)デザイン
具体的なデザインについては特にルールもないので、好きなものを選んで問題ありません。
個人的には縦書きか横書きかということから迷いましたが、横書きの方が圧倒的にデザイン豊富だったので、自然と横書きになりました。
一般的には、担当カラーのものや、ご本人や作品からイメージしたデザインのものを選ぶ人が多いようです。
私も作品に関連したデザインのものを選びました。
便箋と封筒をセットで購入し、デザインをそろえておくと印象が良くなります。
そのほか、私がレターセットのデザインを選ぶときに気になったいくつかの点について、以下に紹介しておきます。
罫線の幅
罫線の幅は文字の大きさが左右されるところで、ファンレターの枚数にも関わってくる、意外に重要なポイントです。
枚数を最小限に抑えることを重視して罫線が細いものを選ぶか、文字を大きく書くことを重視して罫線が太いものを選ぶかは、送る相手によっても異なります。
私はなるべく文字を大きく、見やすく書きたいと思ったので、罫線が太いものを選びました。
なかには罫線がない便箋もありますが、私のように真っ直ぐ文字を書くのが苦手な人は罫線があるものを選びましょう。
レターセットの紙の色
個人的に思ったことなのですが、便箋や封筒の紙の色が紺や黒などの濃い色の場合、ペンの色に非常に困ります。
受け取る側にとっても、白い紙に黒い文字で書かれているたくさんのファンレターを読んでいる途中で、いきなり黒い紙に白い文字の手紙にあたると目がチカチカしてしまうのではないでしょうか。
そのため、紙の色が濃いものは避けたほうが無難です。
もちろん真っ白な紙である必要はありませんが、黒や紺のペンで書いた文字が見える程度の色がおすすめです。
ペンの用意
レターセットとともに迷いがちなのがペン選び。
滑りが悪く、書いたときに文字がガタガタになるのだけは絶対に避けたいですよね。
ということで、ファンレター用にインクがかすれにくく滑らかなペンを用意しましょう。
種類
手紙を書くならやはり万年筆が一番かと思ったのですが、私は個人的になじみのあるゲルインクボールペン「ゼブラ サラサクリップ」を選びました。
実は私、万年筆を使用したことがありません。
これを気に万年筆デビューしようかとも思ったのですが、どうしても背伸びしている感じがしたので普通にボールペンにしておきました。
ゲルタイプのボールペンは水性と油性の長所をあわせ持っており、滑らかな書き心地と文字のにじみにくさが特徴です。
また、字に自信がない人は0.5mm以上の太さのものを選ぶと字が上手に見えるといわれています。
色
ペンの色は便箋や封筒と同様、特に決まりはありません。
ただ、正式な手紙のマナーとしては、黒かブルーブラックが良いとされています。
マナーにこだわるのであれば、本来ペンも万年筆のほうが良いのですが、色については個人的なこだわりがなく、ここで個性を出す必要もないかなと思ったので、私はマナーにのっとってブルーブラックを選びました。
黒ではなくブルーブラックにしたのは、私が選んだ便箋のデザインにはそちらのほうが合うと思ったからです。
ファンレターを送る相手によっては、便箋のデザインに合わせてカラフルなペンを使っても良いでしょう。
基本的な手紙のマナーの検索
さて、レターセットとペンを用意したらすぐにでもファンレターを書き始めたくなるところですが、手紙を書いた経験がほとんど無かったため、事前に一通り手紙のマナーを調べることにしました。
ただし、ファンレターはビジネスレターとは異なるので、今回はあえてマナー通りにせず、カジュアルにした部分もあります。
そこで、以下に基本的な手紙のマナーと、私がどこまでマナー通りにしたか、実際の対応を紹介します。
便箋のマナー
便箋には、本文以外に記載しなければならない項目がいくつかあります。
ただし、それらは形式にこだわる必要がある場合の話で、ファンレターにもすべてがあてはまるとは限りません。
頭語・結語と時候の挨拶
一般的に、手紙を書くときには「拝啓」「敬具」などの頭語と結語や、時候の挨拶などが必要です。
しかし、私は今回あえてそれらを省略しました。
というのも、私が書いたのはファンレターという形のラブレター(しかもテンションが高め)なので、「拝啓」というワードや時候の挨拶を入れてしまうと、その後に続く本文とのギャップが激しくなってしまうからです。
また、普段手紙を書き慣れていないため、シンプルに「はじめまして」から始めたほうが上手に自分の気持ちを伝えられそうだと思ったことも理由のひとつです。
この辺りはファンレターを送る相手や手紙の雰囲気に応じて対応を変えると良いでしょう。
日付・自分の名前・相手の名前
日付と自分の名前と相手の名前について、正式なマナーでは手紙の最後にすべてまとめて書くことになっています。
しかし私は相手の名前を最初に、日付と自分の名前を最後に書くスタイルにしました。
私にとってはそのほうが自然だったからです(というより相手の名前を最後に書くことをこのとき初めて知りました…)。
ちなみに、最後に書く自分の名前は右側に寄せるのがマナーなので、気をつけましょう。
封筒のマナー
封筒はファンレターでもビジネスレターでも基本的に同じなので、便箋とは違い、マナー通りに書くことを意識しました。
特にファンレターを郵送する場合、宛名書きは正しく書くことが重要です。
切手を貼る位置
ファンレターによく使われる封筒は横に長い洋封筒が多く、宛名が横書きになることが多いのではないでしょうか。
宛名が縦書きの場合はハガキと同じく切手を左上に貼りますが、横書きの場合は切手を貼る位置が右上になるので注意してください。
横書きの封筒なのに切手が左上に貼られていると、機械で読み取れなくなってしまいます。
切手は重量により必要な金額も変わるため、不安な人は郵便局の窓口に持参するのが確実です。
私も郵便局に持参し、その場で重さを量ってもらって必要な金額を支払いました。
その際、局員さんが切手の代わりにメータースタンプを貼ってくれたので、自分で切手を貼らずにすみました。
切手貼りに失敗したくない人も持ち込みがおすすめです。
便箋の入れ方
私は今まで気にしていなかったのですが、便箋を折りたたんで封筒に入れる場合、便箋の向きにもマナーがあるようです。
横書きの便箋を半分に折って洋封筒に入れるときは、山折りになっているほうを下にして、封筒の表から見て手紙の書き出しが左上に来るように入れるのが正しい入れ方。
山折りになっているほうを上にしてしまうことが多いですが、この入れ方はマナーとしては間違いなので注意しましょう。
ファンレターの作成
ある程度手紙のマナーを理解したところで、いよいよ本格的にファンレターの作成に取りかかります。
ただし、いきなり書き出すとまとまらなくなるので、必ず下書きを作成してから清書するようにしましょう。
ちなみに私は、以下の流れでファンレターを作成していきました。
下書きの作成
私はまず、伝えたいことをパソコンで自由に書き出してから、話の流れがスムーズになるように順序を変え、構成を整えるという流れで下書きを作成しました。
ちなみに、ファンレターの流れについてネットで検索したところ、初めて送る場合は、自己紹介→作品の感想・好きなところ→応援メッセージという順番が定番のようです。
私もその流れを意識して文章を作りました。
また、本来手紙は書き言葉で書くべきものですが、今回はファンレターなので、相手に語りかけるような口調にしてみました。
とはいえ、もちろんタメ口で書いたわけではありません。
もしご本人を目の前にしたらこんな感じで話すだろうなとイメージして、自分の言葉をそのまま文字にした感じです。
この辺りはファンレターの相手や自分の気持ち次第だと思います。
同様に、文字のバランスを確認するため、封筒の宛名書きも何度か下書きして練習しておきました。
文字数の計算
伝えたいことを全部書き出したところで、気になったのはやはり文字数でした。
「長いと相手の負担になるのでは」「いやいやこの気持ちは短くまとめきれない!」など、ファンレターの適切な枚数についてはネット上でもさまざまな意見があるようです。
ただし、便箋1枚あたりの文字数は便箋の種類や文字の大きさによって異なるので、枚数より文字数を中心に考えたほうが良いかもしれません。
私の場合、購入したレターセットの便箋が8枚綴りだったので、自動的にこれが枚数の上限になりました。
また、文字数については、便箋の上に白い紙をのせて罫線をなぞり、1行あたり何文字程度書けるか、大きめの文字を書いて確かめてみました。
そこから計算したところ、今回8枚の便箋に書ける最大の文字数は1500文字程度だったので、私は今後ファンレターを書く際もこれを上限の目安にしようと思っています。
下書きの添削
もしパソコンで作成した下書きが1500文字以内に収まっていればそのまま清書に移れたのですが、私はこの時点で大幅に文字数をオーバーしていたため、なんとか余分な部分を削ったりまとめ直したりしなければなりませんでした。
個人的に、ファンレター作成の中で最も大変だと感じたのがこの作業です。
舞台を観た感想や応援メッセージなどはどうしても残したいため、それ以外の部分で調節しなければなりません。
例えば、私は初めてのファンレターだったので、どのようなきっかけでファンになったのかを自己紹介とともに書いていたのですが、文字数に余裕がなかったため、かなりコンパクトな紹介になりました。
また、今回は無観客配信という特殊な状況だったので、どのような環境で配信を見たのかということもお伝えしようと思いましたが、そこも短くまとめることにしました。
長文になったときは、自分語りが多くなっていないか、今一度確認してみましょう。
便箋の清書
なんとか全体の文字数を目標の1500文字以下まで減らしたところで、いよいよ清書です。
私は清書する際、以下の点を意識しました。
読みやすさ
最初から最後まで文字をびっしり書くと読みにくいため、ある程度改行することが大切です。
私は話のまとまりごとに改行し、段落の始めは一字下げ、途中で行間を空けずに書く一般的なスタイルを選びました。
ファンレターを送る相手や使っている便箋の種類によっては、段落ごとに行間を空けたり、話題ごとにタイトルをつけてブログ風にしたりするのも良いでしょう。
どのようなスタイルでも、大きな字ではっきりと書く、単語が行をまたがないようにするなどの配慮をすると、読みやすい手紙になります。
後付けの位置
私は最初、本文のあとに日付と自分の名前を書けば大丈夫、くらいに考えていました。
しかし、清書している途中で最後のページの内容が後付けだけになりそうだということに気づき、悩んだ結果、急遽本文を増やす事態に陥りました。
便箋の始めに後付けが来るのは良くないこととされているので、清書の際は本文が便箋のどこで終わるかにも注意しましょう。
ページ数の記載
もともと、8枚の便箋に大きめの文字で書いて最大1500文字という計算だったので、実際は1500文字をやや超える量を便箋7枚で収めることができました。
そして、本文の清書後、私は便箋の余白部分に「○/7」という形でページ数を記載しておきました。
ページ数があると、相手が手紙を読む際に万が一便箋がバラバラになっても安心ですし、残り何枚あるかの目安にもなります。
ただ、これらは必ず記載しなければならないものではなく、便箋の枚数にもよるので、個人の好みで決めてください。
封筒の清書
封筒には、文字のバランスに気をつけて相手と自分の名前・住所を正しく記載します。
ちなみに私は、便箋だけでなく封筒にも日付を記載しておきました。
ファンレターは届いてからすぐ読まれるとは限りません。
コロナで状況が日々変わっていくこともあり、開ける前からどのタイミングで書かれたものかわかったほうが良いのではないかと思ったからです。
ただしこれも必ず書かなければならないものではないので、個人の好みではないでしょうか。
あとは、封筒に便箋を入れて封をすればファンレターの完成です。
切手を貼ってポストに入れるか、郵便局に持ち込めば、数日のうちに相手のもとに届きます。
ファンレターを書いた感想
今回、初めて全力のファンレター(ラブレター)を書いてみて、自己満足ではありますが、率直に楽しかったです。
普段手紙を書き慣れないため、マナーに戸惑ったり、お伝えしたいことをまとめるのに苦労したりもしましたが、私の気持ちが確実に届くと思うと、その苦労すらとても幸せでした。
微力ながら、私の手紙があの方のモチベーションにつながることを祈るばかりです。
それから、実は私、今月また応援している方の舞台をライブ配信で観劇する予定があるため、再びファンレターを書くつもりでいます。
あの方が舞台で活躍なさっているところをまだまだたくさん見たいので、応援しているファンがここにいることを、これからも直接アピールしていくつもりです。
みなさんも、いつも好きな人から生きる力をもらっているお返しに、感謝の気持ちをファンレターという形で直接お伝えしてみてはいかがでしょうか。
国立大学にて日本文学を専攻。
一般企業に就職したのち、フリーランスのWebライターに転身。
クラウドソーシングサイトを通じて、大手出版社が運営する本のポータルサイトに書籍レビュー記事を投稿した経験を活かし、2019年に書籍・情報サイト「いかけや日記」を開設。
2020年頃、宝塚歌劇団のファンに。
舞台の原作本を読む機会が増えたことから、2024年、「いかけや日記」を宝塚原作本の紹介を中心としたサイトへとリニューアル。
なお、読書スピードは超スロー。