「どうして、私の想いだけが届かないんだろう…」
「こんなに尽くしているのに、どうして報われないんだろう…」
そんな風に、一方通行の恋に心をすり減らし、自分の優しさが無価値なものに思えてしまう夜、ありませんか。
今日は、そんなあなたのための「処方箋」です。
ご紹介するのは、文豪・山本周五郎による二つの愛の物語が収められた一冊、『柳橋物語・むかしも今も』。
この記事を読み終える頃には、あなたのその優しさが、その愛が、決して無駄なものではないと、きっと感じられるはずです。
まずは基本情報から|『柳橋物語・むかしも今も』はこんな物語
この珠玉の物語を紡いだのは、数々の名作で知られる文豪・山本周五郎。
新潮文庫から出版されている本作は、江戸の町を舞台にした時代小説でありながら、読む人の心を深く揺さぶる、珠玉の恋愛小説でもあります。
【ネタバレなし】この短編集の、大まかなあらすじ
この本に収められているのは、江戸の空の下、過酷な運命に翻弄されながらも、ひたむきに人を愛し抜いた者たちの物語です。
派手な事件が起こるわけではありません。
しかし、そこには、報われないとわかっていながらも、愛する人の幸せだけを願い、すべてを懸けて尽くし抜く、愚直で、切なく、そしてあまりにも尊い「無償の愛」が描かれています。
ページをめくるたびに、あなたは彼らの物語の静かな目撃者となり、その切ない愛の行方に心を揺さぶられることになるでしょう。
この短編集が、あなたの心に効く「3つの体験」
なぜこの物語が、報われない恋に苦しむあなたのための「処方箋」となるのか。
この本があなたに与えてくれる、珠玉の「3つの感情体験」をご紹介します。
体験1:「柳橋物語」で味わう、愛する人を「守り抜く」という覚悟
一つ目の物語「柳橋物語」で描かれるのは、想い人への気持ちを胸に秘め、ただひたすらに彼女を守り抜こうとする男・幸太の姿です。
ヒロインのおせんには、遠い上方へ稼ぎに行った、将来を誓い合った幼馴染みがいます。
彼女はその約束だけを信じ、幸太の真っ直ぐな想いを拒絶し続けます。
しかし、どれほど冷たくあしらわれようと、幸太はおせんを見限らない。
それどころか、火事や水害が彼女を襲うたび、自らの命を危険に晒してでも、彼女を守ろうと駆けつけるのです。
「たとえこの想いが届かなくても、君が無事でいてくれれば、それでいい」
そんな声が聞こえてくるような彼の行動は、私たちの胸に深く突き刺さります。
愛するとは、時に自分の身を犠牲にしてでも相手を守り抜くという、静かで、しかし燃えるような「覚悟」なのだと、この物語は教えてくれます。
体験2:「むかしも今も」で知る、愛する人の「幸せを祈る」という献身
二つ目の物語「むかしも今も」の主人公・直吉は、幸太とはまた違う形の愛を私たちに見せてくれます。
不器用で、「のろま」と蔑まれながら生きてきた直吉。
彼にとって唯一の光は、幼い頃から見守ってきた娘・まきの存在でした。
しかし、成長したまきは、器用で人好きのする職人・清次と恋に落ち、結婚してしまいます。
自分の恋が敗れただけでなく、二人の後見人として、彼らの幸せを見守り続けるという残酷な役目を引き受けた直吉。
彼はまきを奪おうなどとは微塵も考えません。
ただひたすらに、まきが幸せな人生を送れるように、その人生の障害となるものを取り除き続けるのです。
彼のこの愚直なまでの献身を読んだ時、本当に心が震えました。
愛するとは、自分のものにすることだけではない。
相手の幸せを、自分の幸せよりも強く祈り続けること。
そんな、どこまでも深い「献身」の姿に、涙が流れるでしょう。
体験3:過酷な運命の先に灯る、ささやかな希望の光
この二つの物語に共通するのは、恋愛の苦しみだけではありません。
地震、火事、水害、そして貧困。
登場人物たちは、現代の私たちが想像する以上に過酷な運命を懸命に生きています。
彼らが望むのは、大それたことではありません。
「ただ、愛する人と一緒に、ささやかに暮らしたい」――その小さな、しかし何よりも大切な願いです。
この物語は、そんな彼らの祈りが、長い苦しみの果てに、温かい光となって灯る瞬間を描き出します。
読み終えた後、あなたの心には、きっと静かで優しい希望が満ちているはずです。
「私のこの苦しみも、いつかきっと報われる」と。
山本周五郎が描く「不器用な愛」に心打たれたあなたへ
今回ご紹介した幸太や直吉のように、不器用ながらも、ただひたむきに誰かを想う。
そんな真っ直ぐな愛情の姿は、山本周五郎作品の大きな魅力の一つです。
もしあなたが、そんな「不器用な愛」の物語にもっと触れてみたいと感じたなら、こちらの記事もきっとあなたの心に深く響くはずです。
人間関係に疲れ、優しさを失いそうになった時に、ぜひ読んでみてください。
【体験する処方箋】物語を120%楽しむ2つの方法
この素晴らしい物語を、あなたもぜひ体験してみてください。
特におすすめの楽しみ方を、心を込めて2つご紹介します。
① 書籍で「読む」:物語の神髄を味わう
私が最も強くおすすめしたいのは、やはりこの「書籍で読む」という体験です。
山本周五郎が紡いだ一文一文をじっくりと目で追い、あなた自身の想像力で江戸の風景や登場人物たちの心の機微を感じる。
これこそが、この物語の持つ力を120%受け取るための、最高の体験だと私は信じています。
まずは、この物語の原点に触れてみてください。
② プライム・ビデオで「観る」:感動を追体験する
もし、あなたが書籍を読んで深く心を動かされたのなら、ぜひこの「特別な処方箋」も試してみてください。
「柳橋物語」は、宝塚歌劇団によって『川霧の橋』というタイトルで舞台化されており、Amazonプライム・ビデオでその感動を追体験することができます。
文字で想像した登場人物が、美しい舞台の上でどのように生き、愛したのか。
原作を読んだ後に観ることで、その感動は間違いなく何倍にも膨れ上がりますよ。
※ご注意ください※
こちらはプライム会員見放題の対象外で、レンタルまたは購入で視聴できる作品です。
まとめ:あなたのための「処方箋」を受け取ってください
今回は、山本周五郎の『柳橋物語・むかしも今も』を「処方箋」としてご紹介しました。
報われない恋は、本当に苦しいものです。
しかし、この物語は教えてくれます。
誰かをひたむきに愛したその時間は、その想いは、決して無駄にはならない、と。
あなたの優しさは、巡り巡って、いつか必ずあなた自身を温める光になるはずです。
この物語が、あなたの明日を照らす希望になることを、心から願っています。
さあ、まずはすべての始まりである、物語の原点に触れてみませんか?