日本橋高島屋で2024年7月10日から15日まで開催された「轟悠(藏人)展 -とき放つ トリコロールに愛のすがた-」。
宝塚歌劇団の元トップスター、轟悠さんの退団後初となる個展に、ファンならずとも大きな注目が集まりました。
轟悠さんが新たな舞台へ
個展の開催発表があったのは2024年5月29日。インターネット上のさまざまなメディアが一斉に報道しました。
記事には轟さんからのコメントも添えられています。
「作家としてデビューするにあたり、日本橋髙島屋美術画廊にて初の個展を開催する運びとなりました。キャンバスにアクリル絵の具を流し込み、“偶然性を表現する”のがポーリングアートの魅力です。また、作品には上下左右の正位置はなく、手にとっていただいた方のお心に寄り添いながら、様々な角度から鑑賞いただけるのも、このアートの楽しみ方です。今回の作品展では、約60点を制作しました。ぜひ、この機会に、より多くの方にご覧いただき、ポーリングアートの魅力を感じていただけたら幸いです」 轟 悠(藏人)
その後、日本橋高島屋の公式サイトより、個展初日の7月10日のみ入場整理券が配布されること、作品の購入点数に制限はないこと、個展期間中に作家の在廊はないことなどが発表されました。
入場は無料です。
初日は開店前に入場整理券を求めて約130人が並び、個展開始直後には作品購入のお会計を待つ列ができるほど。
初日の昼過ぎまでに約6割が売れたそうです。
なお、個展開始後に朝日新聞・産経新聞・読売新聞の3社から轟さんのインタビュー記事が出ました。
インタビューの際、轟さんは白いレースのロングスカートをお召しだったそうです。
きっとお綺麗だったでしょうね!
ポーリングアートが生み出す、唯一無二の世界
個展の会場となったのは日本橋髙島屋本館6階の美術画廊。
まず会場外側のウィンドウに3つの作品が展示してあり、私たちをお出迎えしてくれました。
遠くからでもカラフルな色使いが目を惹いたので、轟さんのことを知らない人も興味を持ったかもしれません。
入口には、宝塚歌劇団の演出家である植田紳爾先生や、轟さんと同期の稔幸さん・真琴つばささん・愛華みれさん、轟さんの相手役を務めた月影瞳さん、そして人吉新聞社などからのお花が飾られていて、轟さんへの愛情と応援の気持ちが伝わります。
また、芳名帳とお手紙BOXも設置されており、ファンの皆さんからの熱いメッセージが届けられている様子でした。
ささやかながら、私もお手紙を入れさせていただきました。
何回でも入場できるようになっていたので、個展を見てからカフェなどでお手紙を書き、再び会場を訪れてBOXに入れるファンの方もいらしたようです。
画廊の中に入ると、四方の壁と部屋中央にある柱にぐるりと作品が飾られていて、奥には轟さんからのメッセージと美術家の横尾忠則先生から「頭で見ないで、愛と心で感じ取って」との推薦文が掲示されていました。
トリコロールカラーを基調とした約60点のポーリングアートは、轟さんが訪れたフランスの地や、宝塚時代に出演したフランスにゆかりのある演目(「愛あれば命は永遠に」、「ベルサイユのばら」、「凱旋門」、「パッサージュ」、「ラヴィール」)から着想を得たそうです。
宝塚時代から轟さんを応援しているファンにとっては感慨深い展示となったのではないでしょうか。
順路の指定は特になく、自由に見て回れるようになっていましたが、入ってすぐに宝塚の組カラーを使った作品や劇団の110周年を祝うような作品があり、そこからそれぞれの演目モチーフの作品が順番に並んでいました。
作品の展示順は轟さんご自身でお決めになったとのこと。
個展初日で「すぐに見て選ばなければほかの人に買われてしまう!」という状況でなければ、今後は展示順にも注目したいところです。
個展には宝塚のOGさんも何人かいらしていたようでした。
なお、画廊内や作品の写真撮影は禁止されていましたが、日本橋高島屋のInstagramで轟悠展の様子が公開されています。
個展でしか味わえない、特別な体験
ここからは個展の個人的な感想です。
今回のテーマはトリコロールとのことでしたが、情熱的でパワーが感じられるものもあれば、落ち着いたトーンできらめきが感じられるものもあり、印象はさまざまでした。
近くで見ると、キラキラしているところや描き足したと思われる部分にも気づけます。
横尾先生からは「頭で見ないで、愛と心で感じ取って」とのお言葉がありましたが、どうしてもモチーフとなった舞台の世界観を鍵に作品を見てしまいました。
舞台映像を見てから個展を訪れていたら、また違った感想を抱けたかもしれません。
また、個展を訪れる前は、予算を決めたうえで、轟さんの作品ならなんでも欲しいと思っていましが、実際に作品を見ていくうちに、案外自分にも好みがあることに気づいたのは新しい発見でした。
購入して自宅に飾るなら、個人的には力強い作品よりも見ていて安らげる作品、希望や光を感じられる作品を選びたいようです。
これまで美術館に行ったことはあっても、展示されている絵を買うなどということは考えたこともなかったので、個展ならではの絵の見方を体験できたと思います。
私が訪れたときにはほとんどの作品が売れてしまっていましたが、予算的には買えるものもあったので、購入したいならやはり初日に訪れるべきですね!
轟悠さん、美術作家としての船出
「轟悠(藏人)展 -とき放つ トリコロールに愛のすがた-」は、轟さんの新たなスタートを応援できる貴重な機会となりました。
美術作家になられた轟さんの情熱と才能に触れ、表現方法が変わっても轟さんが私たちに希望を届けてくださることに変わりはないのだな、ということを知れました。
次回の個展ではどのような作品が登場するのでしょうか。
楽しみに待ちたいと思います!
国立大学にて日本文学を専攻。
一般企業に就職したのち、フリーランスのWebライターに転身。
クラウドソーシングサイトを通じて、大手出版社が運営する本のポータルサイトに書籍レビュー記事を投稿した経験を活かし、2019年に書籍・情報サイト「いかけや日記」を開設。
2020年頃、宝塚歌劇団のファンに。
舞台の原作本を読む機会が増えたことから、2024年、「いかけや日記」を宝塚原作本の紹介を中心としたサイトへとリニューアル。
なお、読書スピードは超スロー。