毛深さに悩む中2女子の変化の夏(『moja』吉田桃子/講談社)

自分の外見にコンプレックスがある人は多いだろう。

もっと背が高ければいいのに、もっと目が大きければいいのに、もっと鼻が高ければいいのに…。

『moja』の主人公、理沙もコンプレックスを抱えるひとりだ。

彼女の悩みは毛深いこと。

女の子にとっては深刻な悩みだ。

個性を尊重する時代になっても、女性には毛が生えないと信じている男性がいる。

一般的に女性よりも男性のほうが体毛が濃いことは確かだが、決して女性に毛が生えないわけではない。

体毛の濃さは人それぞれで、女性でも毛深い人はたくさんいる。

カミソリで定期的に毛を剃ったり、数十万ものお金をかけて脱毛に通ったりと、みんな時間と労力をかけて体毛と戦っているのだ。

そして、女性はつるつるの肌が当たり前とされがちの社会で、毛深い体質に生まれてしまった女の子のコンプレックスは根強い。

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あらすじ

中学2年生の理沙は毛深いことがコンプレックス。

私服は長袖長ズボンかロングスカート、制服のときはスカートの下に1年中タイツを履き、肌を隠している。

そして今年も彼女が最も苦手な季節、夏が来た。

理沙が毛深いことを知らない友達の希空とこのみからは、猛暑日でも肌を露出しないことを怪しまれるが、「日焼けしたくないから」と言ってなんとかごまかす。

彼女の頭の中はいつも毛でいっぱい。

露出が増える夏ならなおさらだ。

たくましすぎる体毛にうんざりする理沙。

そんな中、夏休みをきっかけに、希空が彼氏づくりに動き出した。

それを見て理沙もコンプレックス解消のために行動し始めるのだった。

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コンプレックスに悩む思春期の少女の姿に共感

この作品は理沙の視点から描かれている。

家族にも友達にも相談せず、ひとりでコンプレックスに悩む彼女の頭の中は、読者だけが知ることができる。

 恋愛するってことは相手と親密になるってことだ。だんだん距離が近づいていって、お互いの肌に触れて……。
 だめ! 考えただけで心が爆発しそうになる。
 毛深い腕や脚を見られたくない!
 洋服の下はこんなに汚いって、知られたくない!
 そのためには、誰かと特別に親しくなることも避けなくてはいけない。
 だから、私は恋しない。

『moja』p.45(吉田桃子/講談社/2019)

コンプレックスのせいで恋愛に積極的になれない理沙。

毛深さに悩んでいる女性なら、一度は彼女と同じことを考えたことがあるのではないだろうか。

ほかにも、作中の理沙の行動は共感できるものが多かった。

例えば、理沙は友達と出かけるとき、つい彼女たちのむき出しの肌に目がいってしまう。

本当は女の子らしい服が好みだが、そういった服はノースリーブやミニスカートなので着てみたくても買わない。

体毛に限らず、外見にコンプレックスを持つ人ならば、気になる箇所を他人と比較してしまったり、体型を気にして好きな服を買えなかったりした経験があるだろう。

また、自分がどれほど毛深いことに悩んでいるかを上手に伝えることができず、理沙は親と衝突してしまう。

カッとなって暴言を吐いたあとにやってくる罪悪感。

ただでさえコンプレックスで自己否定感が高まっているにもかかわらず、思春期がそれに拍車をかける。

思春期真っ盛りの人はもちろん、すでに大人になった人も自分の10代の頃を思い出してしまうくらい、理沙の声は心に刺さる。

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コンプレックス解消の鍵は

コンプレックスを隠している理沙は、周囲の人に「かわいい」「優しい」と言われてもその言葉を受け入れることができない。

毛のことを知らないからかわいいなんて言えるんだ、毛のことばかり、自分のことばかり考えている人間が優しいはずがないと思ってしまうのだ。

一方、理沙の同級生の総一は学年で一番背が小さいが、そのことをクラスメイトにからかわれてもまったく気にしない様子。

総一は彼らと一緒に笑えるくらいあっけらかんとしている。

どうしてそんな平然としていられるのか、理沙は彼のことが理解できない。

しかし、褒め言葉を受け入れられない自分に気づいたとき、彼女の心に変化が起こる。

主人公の理沙を通してコンプレックスを解消するヒントを教えてくれる本作は、外見に悩む人を前向きな気持ちにさせてくれる。

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コンプレックスに悩むすべての人におすすめ

コンプレックスは誰にでもあるもの。

しかし、ネガティブな部分にばかり目を向けていたら、自分の良いところが見えなくなってしまう。

好きなところも嫌いなところも受け入れて、自分らしく生きていきたいと思った。

コンプレックスが頭から離れない人にぜひ読んでほしい1冊。


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