あの人の一言、同僚のあの態度…。
複雑な人間関係に、頭の中がぐるぐるしてはいませんか?
「考えすぎ」だとわかっていても、一度気になると、なかなか思考のループから抜け出せない。
そんな夜は、誰にでもあるはずです。
そんなあなたに今日処方したいのは、難しいことをぜんぶ忘れて、頭を空っぽにして笑える物語。
イギリスの文豪が書いた、シェイクスピアの名作喜劇『十二夜』です。
「シェイクスピアって、なんだか難しそう…」
なんて、思わないでください。
この物語は、あなたの心を理屈抜きで軽くしてくれる、最高のエンターテイメントなのです。
読み終える頃には、きっと悩んでいたことが少しだけ、どうでもよくなっていますよ。
まずは基本情報から|『十二夜』はこんな物語
今回処方するのは、ウィリアム・シェイクスピア作の陽気な恋愛喜劇です。
数ある翻訳の中でも、今回は言葉遊びの解説が特に丁寧で読みやすいと評判の、松岡和子さん訳・ちくま文庫版を手に取りました。
シェイクスピア作品に初めて触れるという方にも、心からおすすめできる一冊ですよ。
【ネタバレなし】3分でわかる『十二夜』のあらすじ
舞台は、美しい国イリリア。
船の事故で双子の兄を亡くしたと信じるヒロイン・ヴァイオラは、身を守るため、男装して「シザーリオ」と名乗り、領主であるオーシーノ公爵に仕えます。
ところが、公爵に仕えるうち、ヴァイオラは彼に恋をしてしまうのです。
しかし、当の公爵は、美しい伯爵令嬢オリヴィアに夢中。
ヴァイオラは、切ない想いを隠しながら、公爵の恋の使者としてオリヴィアのもとへ送られます。
すると、事態は思わぬ方向へ。
なんと、公爵には見向きもしなかったオリヴィアが、男装の麗人であるヴァイオラ(シザーリオ)に一目惚れ!
「ヴァイオラ → 公爵 → オリヴィア → ヴァイオラ」という、全員が一方通行の、奇妙な三角関係が生まれてしまいました。
さらに、死んだはずのヴァイオラの双子の兄・セバスチャンが、同じ街に現れたことで、物語は予測不能な大混乱へと発展していきます。
この後、彼らの恋の矢印は、一体どこへ向かうのでしょうか…?
【処方箋解説】『十二夜』の”笑い”が心に効く3つの仕組み
では、なぜこの400年以上前のドタバタ喜劇が、現代を生きる私たちの心を軽くする「処方箋」になり得るのでしょうか?
その理由は、シェイクスピアが仕掛けた「笑い」の裏に、人間関係のモヤモヤを吹き飛ばす3つの巧みな仕組みが隠されているからです。
仕組み1:「全員片思い」の祝祭空間が、あなたの悩みを相対化する
報われない恋をしている時、「こんなに辛いのは自分だけだ」と孤独を感じてしまいますよね。
しかし『十二夜』では、主人公から脇役まで、見事に全員が一方通行の恋をしています。
これはもはや個人の悩みではなく、一種のお祭り(祝祭空間)です。
この滑稽な状況を客観的に眺めることで、読者は「ああ、恋なんて、しょせんはこんなものか」と自分の悩みを相対化し、心を軽くすることができるのです。
仕組み2:壮大な「勘違い」の連鎖が、「まあ、いっか」の魔法をかける
この物語をややこしくしているのは、登場人物たちの激しい「勘違い」です。
オリヴィアの家の執事は「お嬢様は俺に惚れている!」と思い込み、おかしな行動を繰り返します。
私たちは彼の姿を笑いながらも、ふと気づくはずです。
「自分も、誰かの些細な言動を都合よく解釈して、一喜憂憂していないか?」と。
壮大な勘違いが引き起こす大騒動は、人間関係の悩みの多くが実は思い込みから生まれることを教えてくれます。
そして、「まあ、いっか」と難しい考えを手放す魔法をかけてくれるのです。
仕組み3:極上の「言葉遊び」が、思考を”楽しい”で上書きする
登場人物たちが繰り広げる、ウィットに富んだ言葉の応酬。
それはまるで、思考のスポーツです。
相手の言葉を巧みに受け、意味をずらして投げ返す。
この知的なユーモアのシャワーを浴びている間、私たちの脳は悩みを考える暇を失い、「楽しい」という感情で上書きされていきます。
松岡和子さんの翻訳は、この極上の言葉遊びを丁寧に解説してくれるため、私たちは思考のストレッチをしながら、最高の気分転換を味わうことができるのです。
【体験する処方箋】物語を120%楽しむ3つの方法
この素晴らしいお祭り騒ぎを、あなたもぜひ体験してみてください。
あなたの読書スタイルに合わせて、2つの最高の楽しみ方をご提案します。
① Kindle Unlimitedで「読み放題」を体験する
私が今回、最も強くおすすめしたいのが、この「読み放題」という体験です。
なんとこの『十二夜』、月額サービスのKindle Unlimitedの対象作品なんです!
追加料金は一切かからず、この傑作喜劇を心ゆくまで楽しむことができます。
しかも、読み放題の対象は、光文社古典新訳文庫の安西徹雄さん訳。
この記事でご紹介した松岡和子さん訳の丁寧で優しい言葉選びとはまた違う、シャープで現代的な翻訳が魅力です。
翻訳による言葉の違いを読み比べてみるのも、文学の奥深い楽しみ方の一つですよ。
② 書籍で「読む」:こだわりの一冊をじっくり味わう
もちろん、紙の本でじっくりと言葉の魔法に浸る体験も、何物にも代えがたいものです。
手元に置いて、いつでも読み返せる「お守り」のような一冊になりますよ。
この記事で主に解説した、言葉遊びの注釈が特に丁寧な松岡和子さん訳はこちらからどうぞ。
まとめ:あなたのための「処方箋」を受け取ってください
今回は、シェイクスピアの名作喜劇『十二夜』が、なぜ最高の「処方箋」になるのか、その仕組みを解説しました。
この物語は、登場人物たちの「全員片思い」という滑稽な状況を通して、私たち自身の悩みを客観視するのを助けてくれます。
さらに、壮大な「勘違い」が生む大騒動は、「まあ、いっか」と悩みを手放すきっかけを与えてくれるでしょう。
そして何より、極上の「言葉遊び」の楽しさが、あなたの思考を悩みからそっと引き離し、心を軽やかにしてくれるのです。
もし今、あなたが人間関係に少し疲れているなら、難しいことは考えずに、この陽気なドタバタ劇に身を任せてみてください。
物語の力で思いっきり笑ったあとには、きっと心が少しだけ軽くなっているはずです。